$94-01-19-19-4-0 [soundStopAll] [charaSet A 98113800 1 殺生院キアラ] [charaSet B 23001000 1 BB] [bgm BGM_EVENT_54 0.1] [flashin once 0 0 8A0808FF 8A0808FF] [scene 10000] [fadein black 1.5] [wait fade] [cameraFilter gray] [effect bit_talk_noise] @ 『七十二柱の魔神』である事を放棄し、[r]私は『魔神ゼパル』として独立した。 [k] @ 他の三柱がどの座標を選んだのかは知る由もなく、[r]また興味もない。 [k] @ 私は人間に[#憎:にく]しみを[#抱:いだ]かなかった。[r]むしろ彼らに可能性を感じ、期待した。 [k] @ 『人類を情報として管理する』。[r]それが私が得た、新たな命題だった。 [k] [messageOff] [scene 41500 1.0] [wait scene] @ 私はセラフィックスを活動拠点に定めた。 [k] @ 以前からこの施設が不可視領域の原因のひとつではないかと、[r]フラウロスが報告していたからだ。 [k] @ 私は教会でひとりの人間に寄生した。[r]時間神殿で受けた傷を癒やすまでの緊急措置として。 [k] @ 我が命題を解くには[r]何十年という時間が必要となる。 [k] @ その間、カルデアの目を逃れる為にも、[r]人間に寄生するのは良策と言えた。その筈だった。 [k] @ 私が取り憑いた人間の名は殺生院キアラ。[r]教会で人々の悩みを聞き、解決するセラピストだ。 [k] @ キアラは[#偽:いつわ]りなく聖女だった。[r]……救世主の器。その資格を持ってさえいただろう。 [k] @ 彼女が世間から迫害されたのは、その善性が人の世では[r]“都合の悪いもの”とされたからだ。 [k] @ 今でも断言できる。私という外部からの因子がなければ、[r]キアラは[#慎:つつ]ましやかだが幸福な人生を送り、 [k] @ 小さなコミュニティにおいて、[r]最後まで人々に[#敬:うやま]われるに足る人物だった、と。 [k] @ だが、その善性は私には不要だ。[r]なので私の手で意識の底に落とし込んだ。 [k] @ 私はキアラが眠っている間に行動し、[r]少しずつ力を取り戻そうと考えた。 [k] [messageOff] [scene 10000 1.0] [wait scene] @殺生院キアラ 素晴らしい……感情を数値化し、[r]争いに悩む人々の心を均等化する。 [k] @殺生院キアラ ゼパル様のお考えは善いものです。[r]それでしたらどうか遠慮なく、[#私:わたくし]の体をお使いください。 [k] [messageOff] [scene 41100 1.0] [wait scene] @ キアラは抵抗せず、私に体の使用権を差し出した。[r]彼女の献身と感動、そして私に向けられた尊敬は本物だ。 [k] @ 私は(魔神でありながら!)気を良くし、キアラの知識と[r]立場を使い、効率よく油田基地を支配していった。 [k] @ キアラの肉体は異性にとって格好の交渉材料になった。 [k] @ どのような立場・役職の人間も、[r]キアラが寄りかかればたやすく落ちた。 [k] @ この時、私は人間たちの様々な快楽を学習した。 [k] @ 知らなければ良かった。知らなければ良かった。[r]快楽など、魔神には不要だったのに。 [k] @ 精神体である私にとって、[r]肉のある快楽は凄まじい刺激であり、堕落だった。 [k] @ 人間の機微、関係性が生む刺激、精神性を利用する快楽。[r]いつのまにか、私はキアラに教えを請う立場になっていた。 [k] @ そう。絶対服従だったキアラは、[r]いつしか私の行動を管理していたのだ。 [k] @ どうすれば効率よく研究員たちを陥落できるのか。[r]どうすればより強い権能を得られるのか。 [k] @ その意欲、行動力は私ですら舌を巻くほどだった。 [k] @ 眠っていた内面の醜悪さは、[r]魔神と呼ぶに相応しいものだった。 [k] [messageOff] [scene 41300 1.0] [wait scene] @ 確かにセラフィックスをSE.RA.PHに変えたのは私だ。[r]だがその後の変化は、私の予想を超えたものだった。 [k] @ キアラは狂乱状態になった[r]セラフィックスの職員たちを救い、癒やし、 [k] @ 彼女がいなければ誰一人として生きていけない[r]依存体制を作りあげた。 [k] @ その後で[line 3]ひとりひとり、[r]そのグループから落ちこぼれさせていったのだ。 [k] @ 特に理由もなく、クジで決めるような気楽さで。 [k] @ グループから落とされる危機感、恐怖は、職員たちの[r]人格を崩壊、堕落させ、人間性を剥奪していった。 [k] @ キアラに捨てられたくなくて妻を殺す男がいた。[r]キアラを殺すために立ち上がり、周りに殺された女がいた。 [k] @ キアラの悲しむ顔を見て人を殺す女がいた。[r]キアラから逃げようとして逃げ切れなかった男がいた。 [k] @ ……私は隠れ家が欲しかっただけだ。[r]地獄を見たいとも、必要ともしていなかった。 [k] @殺生院キアラ ふふ。なにを言われるのでしょうゼパル様。[r]これからもっと面白くなりますよ? [k] [messageOff] [scene 41200 1.0] [wait scene] @ そうしてキアラは職員を誘導し、天体室を開けさせ、[r]彼らの手で自発的に地獄の釜のフタを開けさせた。 [k] @ 128騎のサーヴァントと、BBがSE.RA.PHに現れた。 [k] @ キアラは私の目的を果たす為と言いながら、[r]SE.RA.PHを影で操る支配者になっていた。 [k] @ 私自身、もうキアラの体を動かせない。[r]キアラの行いを止められなくなっている。 [k] @ [line 3]私は取り憑かれた。 [k] @ 取り憑いたつもりが、[r]そこは私よりおぞましい何かの土壌だったのだ。 [k] @殺生院キアラ ……そうだったのですか。[r]逃れた四柱の方々は特異点を作ろうと…… [k] @ 魔神たちの命題は違えど、[r]その達成には特異点の作成が必須条件となる。 [k] @ 私がそれを教えると、キアラは心の底から、[r][#憐:あわ]れむように微笑んで否定した。 [k] @ なぜだ、と私が問うと、 [k] @殺生院キアラ だって[line 3]特異点を作るより、[r][#自分が特異点になった方が]気持ちがいいでしょう? [k] [messageOff] [scene 10000 1.0] [wait scene] @ 人間の欲望を私は[#侮:あなど]っていた。[r]手に負えない、とようやく理解した。 [k] @ だが全ては後の祭りだ。キアラから分離しようと試みたが、[r]キアラの体の主導権はおろか、私には一切の自由がなかった。 [k] @ すぐに出て行ってほしい。[r]私はそう[#懇願:こんがん]した。 [k] @ みっともなく。何でもする、[r]代わりの生贄を用意するとさえ言った。 [k] @殺生院キアラ 何を仰るのです、ゼパル様。[r][#私:わたくし]たちは運命共同体。共に理想を抱いたもの。 [k] @殺生院キアラ それとも[line 3][r]もしや、[#私:わたくし]に不満がおありなのですか? [k] @ そう語りかけてきた時の恐怖が今も離れない。 [k] @ ……許してほしい。[r]もう解放してほしい。 [k] @ 私は日々乗っ取られていく。[r]取り返しの付かない悪魔を生みだそうとしている。 [k] [messageOff] [scene 41500 1.0] [wait scene] @ もう礼拝堂に隠した日記にさえ[#触:さわ]れない。 [k] @ 私に与えられた権利[line 3]私という生命が住まう場所は、[r]キアラの小指の先だけになっていた。 [k] @ 私はあの時の恐怖を振り払い、もう一度懇願した。[r]『解放してほしい』『もう見逃してほしい』と。 [k] @殺生院キアラ [line 3]もう。[r]ゼパル様にも困ったものですわ。 [k] @殺生院キアラ 小指の先だけがゼパル様の管轄だと[r]勘違いなさっていたのですね。 [k] @殺生院キアラ 貴方さまの管轄など、もう残ってはいないのです。[r]小指の先は貴方さまへの恩情で与えていたもの。 [k] [bgmStop BGM_EVENT_54 0.7] @殺生院キアラ ゼパル様はもう意識しかないのです。[r]それも、[#私:わたくし]が許しているからのものですが。 [k] [messageOff] [fadeout black 0.1] [wait fade] [flashin once 0.1 20000 8A0808FF 8A0808FF] [wipeFilter sazanami 0.5 1.0] [cameraFilter normal] [scene 10000] [fadein black 0.1] [wait fade] [wt 0.4] @ 私は発狂した。 [k] @ 発狂しながら、最後の思考を走らせた。 [k] @ 私だった全てはとっくにこの女に奪われていた。[r]キアラから離れれば私は消滅するだろう。 [k] @ [#人間:キアラ]に隷属するか、[r]魔神として誇りを示して消滅するか。 [k] @ 私は悩んだ末、隷属を選ぼうとし、 [k] @殺生院キアラ ですが、私とゼパル様の仲ですもの。 [k] @ にっこりと笑う。[r]私ですら吐き気をもよおす、慈愛に満ちた美しい笑顔。 [k] @殺生院キアラ ゼパル様がそう仰るのであれば、[r]心を鬼にして、解放させていただきますね? [k] @ いやだ[line 3]いやだいやだいやだ![r]もういい、小指の先だけでいい! [k] @ 助けて、見捨てないで、捨てないで、[r]私を、私の目的も、意思も、理由も奪わないで[line 3] [k] @殺生院キアラ いいではないですかゼパル様。[r]気持ち良ければそれでいいのでしょう? [k] @殺生院キアラ 貴方の目的は人類の救済。[r][#私:わたくし]の目的も、どうやら人類の救済のようなのです。 [k] @殺生院キアラ ですから[line 3][r]後は[#私:わたくし]に任せて、どうぞ原始にお帰りなさい。 [k] [effect bit_talk_noise_gr] [wipeFilter noiseUzumaki 0.5 1.0] [se ad31] @ ああ、きえる、きえる、うすれていく。[r]たもてない、じぶん をたもてない、 [k] [wipeFilter noiseUzumaki 0.6 1.0] @ なんでこんな、こんなことに、わるいことなんか[r]なにもしてこなかったのに、なんで[line 3] [k] [wipeFilter noiseUzumaki 0.7 1.0] @ やだ……いやだよぅ……こんなのひどい……あんまりだ……[r]ころさないで……すてないで……すてないで…… [k] [wipeFilter noiseUzumaki 0.8 1.0] @ わたしを みすてないで キアラさま[line 3] [k] [seStop ad31] [wipeOff] [flashOff] [se ade49] [effectStop bit_talk_noise] [effectStop bit_talk_noise_gr] [messageOff] [wt 2.0] [scene 41500 1.0] [wait scene] [charaTalk B] [charaFace B 6] [charaFadein B 0.4 1] [bgm BGM_EVENT_5 0.1] @BB 悪趣味ですね。ゼパルさんが何を言おうと[r]真逆の方を選んでいましたよね、キアラさん? [k] [charaFadeout B 0.1] [wt 0.1] [charaTalk A] [charaFace A 4] [charaFadein A 0.1 1] @殺生院キアラ まあ人聞きの悪い。[r][#私:わたくし]はゼパル様の願いを聞き届けたまでのこと。 [k] [charaFace A 8] @殺生院キアラ その[#後:あと]なにやら聞こえましたが、[r]もう[#私:わたくし]には関係のない事。すっかり忘れましたわ。 [k] [charaFadeout A 0.1] [wt 0.1] [charaTalk B] [charaFace B 8] [charaFadein B 0.1 1] @BB ……そうですか。 [k] @BB ま、ゼパルさんもセラフィックスの職員を何人も[r]食べていた訳ですし? [#因果応報:いんがおうほう]とファイルしますね。 [k] [charaFace B 6] @BB それで、わたしの仕事は聖杯戦争の管理でいいんですね?[r]あくまで中立に、この戦いを盛り上げると。 [k] [charaFadeout B 0.1] [wt 0.1] [charaTalk A] [charaFace A 1] [charaFadein A 0.1 1] @殺生院キアラ はい、それはもう! [k] @殺生院キアラ SE.RA.PHになった[#私:わたくし]が羽化するまで、[r]ええっと、SE.RA.PH感覚で1年ぐらいでしたよね? [k] @殺生院キアラ それまで落ち続けるのも退屈でしょう? [k] @殺生院キアラ ですからもう、[r]じゃんじゃんサーヴァントを[#喚:よ]ぼうと思って! [k] @殺生院キアラ ああ[line 3]こんな素敵なこと、[r]愉しみすぎてとても、眠っていられないわ! [k] @殺生院キアラ 夢にまで見た[#アレ]が体験できるなんて![r]こんな機会を与えてくれた、えっと[line 3] [k] [charaFace A 0] @殺生院キアラ ゼパ、なんでしたっけ?[r]とにかく、魔神柱さんには感謝しなければいけませんね? [k] [messageOff] [bgmStop BGM_EVENT_5 1.5] [fadeout black 2.0] [wait fade] [soundStopAll] [end]